最近、AI(人工知能)やビッグデータ分析・アナリティクスとか日本企業は、流行の技術に弱いですね。一時は、ERPを否定していたのに、あちこちの企業が導入し始めると、今度は流行のように一斉に導入が始まりました。

  ここでは、AI(人工知能)やビッグデータ分析・アナリティクスが「魔法の杖」かのように「今でしょ」と飛びつく、その前に「ヤルべき事があるでしょ」を述べたいと思います。

1.企業の中には、多くのボトルネックが存在します

(例1)〇〇〇業務はベテランしか担当できない。生産計画、保険事故査定、ETO品の提案・見積り、与信査定・・・・・など。

(例2)新人営業が一人前になるのに、何年もかかってしまう。

(例3)IT部門やIT企業において、超上流は社内外のベテランしか担当できない。

  どこが最大のボトルネックかは、その企業によって異なります。まず企業のビジネス活動の全てを見える化した上で、解消すべき最優先のボトルネックはどこかを特定しなければなりません。

2.特定されたボトルネックの解決手段がAIやビッグデータ分析など

  ボトルネックのタイプによって、解決手段が異なります。

  上記例1では、保険事故査定や与信査定は、既に大量のデータを保持していますので、AIやビッグデータ分析が可能です。その結果、まだ、ベテランでも獲得できていないナレッジを見つけることができます。そのナレッジのタイプで、AIとかビッグデータ分析とかの解決手段を選定します。

  ところが、例2や例3はどうでしょう。AIやビッグデータ分析の対象となる程、事例の数は多くありません。これは、ベテランの暗黙知をどう形式知にして若手に伝承するかであり、必ず未だ形式知にできない暗黙知が残ります。この解決手段は、AIとかビッグデータ分析ではなく、事例Aのようなナレッジマネジメントの方法しかありません。

  しかし、解決する可能性は大いにあります。優れたセールスマンは、商品知識を良く知っているからではありません。保険でも車でも住宅でも売るスキル(暗黙知)があるのです。暗黙知の一定部分をプラクティスとして形式知化し、セールスマンに訓練すれば営業成績はグンと上がります。IBM社のように。

3.ボトルネックの特定と優先順位付けが先決

  その企業で最優先するボトルネックは、大量データからの判断基準の自動化ですか、それともベテラン暗黙知の形式知化と共有ですか?

  AIやビッグデータ分析などの流行の解決手段に飛びついて、前提条件や費用対効果の点から必ずしも最優先でないボトルネックに高価な投資をしてしまうのではないかと心配します。安価で済む「ベテラン暗黙知の形式知化」さえ出来ていないのに。

  まず、企業全体の見える化、そしてボトルネックの特定や優先順位付けが先です。その上で、解決手段を選定すべきです。

  ところが、自社の見える化ができていない、そしてレベル4標準プロセスを持たない日本企業は、ボトルネックの特定の前に、AIとかアナリティクスのソリューションに飛びついてしまいがち。そのビッグデータは必要な属性を網羅しているか、データ自体が正確かを別にして。  

(参考)

  「見える化」は、プロセス参照モデルでのプロセス階層レベル3までで充分です。解消すべきボトルネックと特定された場合に、レベル4以下の詳細を調査すればいいのです。レベル3というと、主要製品のグローバル拠点での計画、調達、製造、受注・出荷プロセスが、A3の一枚で記述できる詳細さです。