ここでは、ビジネスアナリストの4つのレベルへのSEからの育成ステップを説明します。

  3.1.1⇒ビジネスアナリストの4つのレベルと各々の到達目標、ジュニアの場合の例

  3.1.2⇒ビジネスアナリストの知識・スキルと教育・訓練の違い、

     GUTSY-4によってプラクティスを訓練すれば育成期間を相当に短縮できる⇒事例B①

  3.1.3⇒ビジネスアナリストに必要なコンピテンシー(行動特性、個人的資質)

     この7割強についてGUTSY-4は自動的にカバーしている

  3.1.4⇒SEは分析や論理思考に慣れているのでビジネスアナリスト向き、SEからの育成ステップ

3.1.1 ビジネスアナリストの4つのレベルと各々の到達目標

  ビジネスアナリスト(BAst)は、下図のように4つのレベルに分類され、キャリアパスを設定できます。

  上段はIIBA(BABOK)のキャリアパス、下段はGUTSY-4のキャリアパスの定義です。

対象者到 達 目 標
ゼネラルビジネスアナリスト・キャリアパス[IIBA]エントリーレベルBAstジュニアBAstインターミディエイトBAst
認定資格CCBA
(実務3,750時間)5年
シニアBAst
認定資格CBAP
(実務7,500時間) 10年
 タスクとテクニックを一応知っていて、BABOKガイド程度の知識はあります。
 BAとしての実践はまだ何もありません。このレベルの人は上位BAの密接な指導のもとで、極めて限定的な作業のみを行います。
 教育やBABOKの知識を活用して、BAの限定された実務経験があります。
 ビジネスアナリシスのタスクとテクニックを十分理解しています。
 BA業務を成功裡に遂行させるためにどのテクニックや行動を行うか、適切な上位BAの指導が必要です。
 数年のBA経験を持ち、複雑な状況においても単独で仕事ができます。
 異なる状況においてもビジネスアナリシス活動の適切なテクニックを使用することができ、ビジネスアナリシスのほとんどの領域の知識を持っています。
 複雑な状況の中で、長期のビジネスアナリシス業務の経験を持っています。
 テクニックの使用方法のみならず、テクニックの使用が及ぼす効果まで熟知しています。単独で仕事をするだけでなく、大規模プロジェクトにおいて他BAの作業を計画したり、指導もします。
 ビジネスアナリシスに関するほとんどの領域において、深い知識を持っています。
GUTSY-4
[渡辺]
ビジネスマンの必須スキル(1-4年生位)ジュニアBA(5-9年生位)ミドルBA(10-14年生位)シニアBA(15年生以上)
 ITシステムを含む経営システムやビジネスプロセスを理解し、コミュニケーションや論理思考の基礎スキルを習得できている。  ビジネスプロセスの「見える化」を一人で担当できる。すなわち、現状プロセスの調査・記述、課題の抽出、解決策の設 計、そしてITユーザ要求の開発ができる。  戦略の実現、業務課題の解決のためのビジネスアナリシスを主導できる(ステークホルダがひどく対立する組織・人の大きな課題は含まない)。
 ITビジネス要求の開発ができる。
 戦略の実現、業務課題の解決のためのビジネスアナリシスを主導できる(含むステークホルダが対立する組織・人の大きな課題)。
 イノベーションによる新たな戦略を策定できる。
高度IT人材
[経済産業省]
  ITサービスデザイナー ビジネスデザイナー プロデューサー

  この詳細例 ビジネスアナリストのキャリアパス別の到達目標(ジュニアBA例

  このキャリアパスは単なる目安に過ぎませんし、BABOKをLearing(学習)&Doing(実践)だと、この位かかるだろうというものです。しかし、プラクティス(詳細は後述)であるGUTSY-4を利用すれば、東京海上日動システムズ社の入社4年目の若手SEの場合のように、ミドルBAレベル(10-14年生位)のビジネスアナリシス業務を遂行できるのです。

3.1.2 ビジネスアナリストの知識・スキルと教育・訓練の違い

  まず、一般的な知識/スキル、教育/訓練の違いを明確にしてみましょう。以下は、広辞苑やCambridgeなどの辞書を参考にしてまとめました。

(1)知識とスキルとの違い

知識:仕事に関する理論や知識。仕事上でパフォーマンスを発揮するための必要条件だが、十分条件ではない。教育で得た知識は、実務経験で応用して初めて、スキルになる。知識体系であるBABOKを実施するのには、方法論が必要。

スキル:仕事に関する技術や技能、すなわち仕事でパフォーマンスを発揮できる実践的能力。実務経験を通じて獲得する。ある程度は客観的な技術、および全くの個人的な技能とがある。

プラクティス:スキルを形式知化したもので、スキルと知識の間に存在している(詳細は後述)。

(2)教育と訓練との違い

教育:学校教育のように、長期的観点から教え育てること。

訓練:職業訓練のように、一定期間で一定の目標に到達させるために、スキル・技能を習得させること。

(3)ビジネスアナリシスにおいて

  知識を教育によって習得して、実務経験を通じてスキルにするには、あまりにも期間を要します。それに、間違ったやり方の実務経験では、いくら長く多くても回り道が過ぎます。

■知識とスキルの間にプラクティスというものが存在する

      実は、知識とスキルの間に、「ある結果を得るのに最も効率のよい技法・手法・プロセス」としてプラクティスが存在するのです。ビジネスアナリシスのBABOKは、一般的な知識体系であり、方法論/プロセスやプラクティスではありません。

  ・日本の伝統的な武芸では、流派ごとの型がこれに相当

  ・ビジネスアナリシスでは、方法論GUTSY-4エンジニアリング化されたWBSや技法・ツール群、いわばノウハウが形式知化された型がこれに相当

■GUTSY-4を訓練すれば、ビジネスアナリスト育成期間を相当に短縮できる

  ビジネスアナリシスにおいても、訓練によって型やプラクティスを習得すれば、教育・訓練の期間を正当に短縮できます。

  東京海上日動システムズ社の事例では、入社4年目の3人のSEに対して、GUTSY-4のプラクティスを訓練し、それに必要な知識だけを教育したからこそ、短い訓練期間(毎週月火曜)によってビジネスアナリシスを成功することができたのです。プラクティスならば、何も不思議なことではありません。同社の横塚社長(当時)は「4年生でダメなら、9年生にやらせよう」と考えていたことを後から聞きました。

  日本の伝統的武芸には「守破離」という考えがあります。最初は、師匠に言われた型を「守る」ところから修行が始まる。その後、その型を研究してより良いと思われる自分の型をつくることで師匠の型を「破る」。最終的に、師匠や自分の型から「離れ」て自在になることができる。出典:wikipedia

  GUTSY-4はビジネスアナリシスの型プラクティス)なのです。たとえば、CCBAレベルに到達するのに、5年ではなく2年で可能になり、3年分を短縮できます。そして、事例Cで評価されたように、全く経験なくてもプロジェクト参加が可能、すなわち戦力として有償の仕事が堂々とできるのです。3年を超える期間の人件費を考えれば、GUTSY-4のライセンス費用は安いものです。

3.1.3 ビジネスアナリストに必要なコンピテンシー

(1)ビジネスアナリストに必要な基礎コンピテンシー

  BABOKv2では、ビジネスアナリストに必要な基礎コンピテンシー(行動特性、個人的資質)として、5つのカテゴリーに渡って18個の基礎コンピテンシーを定めています。しかし、そのうち11個はGUTSY-4でカバーできており、残り5個だけが真に属人的な資質といえます。だから、東京海上日動システムズ社の入社4年目の若手SEが、ミドルレベルのビジネスアナリシス業務を遂行できたと言っていいでしょう。

⇒ブログ記事:ビジネスアナリストに必要なコンピテンシー(行動特性、個人的資質)

(2)GUTSY-4が目指すビジネスアナリストの最終像

       GUTSY-4では、一人のビジネスアナリストが、戦略からITシステム構築まで、最低限、ITシステム分析までを担当できることを目指しています。8時間単位のSOWの作成、ある場合はITプロトタイプ作成までを行うのです。SE出身のビジネスアナリストにおいては、そんなに難しくはないでしょう。

⇒ブログ記事:GUTSY-4が目指すビジネスアナリストの最終像

3.1.4 SEはビジネスアナリストに向いている

      東京海上日動システムズ社の横塚裕志前社長(現顧問)は、著書『SEよ大志を抱こう』(日経BP社)の中で、ITシステム開発を通じて分析や論理思考に慣れているSEは、元来、ビジネスアナリストに向いていると述べています。私も、全く同感です。

(1)東京海上日動システムズ社の事例によれば

  入社4年目のSEがGUTSY-4を利用して、ビジネスプロセスモデリングやビジネスアナリシス(源流、超上流)を完遂できました。⇒BA教育・研修事例

(2)ある外資系コンサルティング会社のコンサルティング報告書を第3者評価した時

       私が報告書を調査すると、因果関係が弱い事象から無理やり解決策を導いていました。KJ法を使用して「風が吹けば桶屋が儲かる」とのお粗末な論理展開でした。コンサル受診企業は、著名なコンサルティング会社をブランド名によって当初は盲信していましたが、派遣されていたコンサルタントは論理思考力が欠如。

  論理思考に慣れたSEならば、こんなバカなことはしないでしょう。⇒ブログ記事:因果関係が弱いのに、安易に矢印で結んではならない!

(3)SEの場合のビジネスアナリストへの育成ステップ

  たとえば、次のような育成ステップが考えられます。①②から③へ、あるいは①②から④へもあり得ます。

 ①プロセスモデリングへの守備範囲の拡大(超上流)
    ②ビジネスプロセスからIT要求の引き出し(超上流)
    ③戦略からビジネス要求の定義(源流)
    ④意思決定系プロセスでのIT利用
    ⑤組織や人を含めた三位一体の改革  この詳細⇒ブログ

 東京海上日動システムズ社の場合では、入社4年目のSEが上記①から④までを実施しました。

  しかしながら、業務知識に関しては、ITシステム開発を通じただけでは、非常に偏ってしまい上流SE、ましてビジネスアナリストとして通用しません。したがって、上流SEへ、ビジネスアナリストへと業務知識・スキルを計画的に養成していく必要があります。

  この育成計画は、ITベンダーの人事・教育部門の役割です。収支責任を持った現業の事業部門からは短期的な要求しか上がってきません。自社の顧客が何を求めているのか、現業だけではなく顧客の声(VOC)を聞き、人事・教育部門こそ、真っ先に、自らをビジネスアナリシスする必要があるでしょう

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