事例紹介に関するコーナーです。

  事例Aの今野製作所では、図表のように、6カ月間でユーザとの13回のミーティングによって、レベル0の戦略からレベル4プロセス設計までを完了させました。これとレベル5のインクリメンタルな設計・開発とを合わせて、アジャイルな業務システム設計かつITシステム構築を行ったのでした。

1.プロジェクト経過

  下記にプロジェクト経過を示しました。このように、レベル4までで6カ月間を要したのは、ユーザのプロジェクトメンバが社長とマネジャー4人であり、業務上の都合からミーティングは2週に1日PMにせざるを得なかったからです。また、第3回目は、戦略からの業務要求、および抽出した業務課題をプロジェクトメンバで共有し、合意形成することに、丸々、費やしました。

事例1:プロジェクト経過.png

  上記の業務システム設計後、レベル5の業務ルール定義とITシステム開発は、3カ月間でプロトタイプ作成、その後の3カ月間は運用しながら、随時、修正して最適化して行きました。

2.アジャイルな業務システム設計・構築

  中小企業といえども、当初に対象とした業務範囲は、経営管理、マーケティング、人的販売、受注、開発・設計、調達、製造、出荷、経理・財務と幅広いものでした。これが、13回のミーティングで完了したのは、方法論GUTSY-4によるトップダウンアプローチのメリットです。対象とする業務課題や業務プロセスをプロセス階層レベルにしたがって、下記のように都合5回のミーティングの場において、重要なものに絞り込んで行ったからです。

①事業戦略:短期の事業戦略を4つから2つに絞り込み

  同社の2つの事業のうち主力の「イーグル事業」に絞り、その事業戦略のうち、顧客サービス強化(Ⅱ期で完了済み)と海外展開(まだ業務システムとは関係なし)を除外して、ETO品の拡販とサプライチェーン戦略(LT、コスト)に絞り込みました。

②業務課題:抽出した40個の業務課題を20個に絞り込み

  質問・インタビューによって40個のハイレベルの業務課題を抽出しましたが、その影響の大きさを評価して20個に絞り込みました。

③レベル2プロセス分析・設計:戦略からの業務要求および②業務課題の45個から、そのCSF・根本原因を重要性・容易性から評価して22個に絞り込み

  CSF・根本原因について、重要性では、それがどれだけの業務要求と業務課題を解決できるかを評価、容易性では、実現にどれだけの期間を要するかを評価、これによって22個に絞り込みました。そして、この解決のために、10個のレベル2プロセスを設計しました。

④レベル3プロセス分析・設計:レベル2プロセスからレベル3プロセス上にプロセス改革要求(詳細)を157個の抽出し、最終的に77個に絞り込み

  調達計画は社長自身が担当なので除外、人的販売は実施中の営業研修と同時期なので一旦は除外して、設計対象とするレベル3プロセスを33個から20個に絞り込んで、これによってプロセス改革要求(詳細)を157個から77個に絞り込みました。

⑤レベル4・5プロセス設計:レベル4では、プロセス数で55個、ルール数で52個を設計、レベル5では、第1回目の対象を重要度から合計34個に絞り込み

  1回の開発サイクルを3カ月間として、この期間でもってレベル5プロセス設計とルール定義、およびIT構築が可能かつ重要なプロセス・ルールに絞込みました。サイボウズ社のkintoneを採用したので、2回目以降はユーザ自身で設計・構築できました。

 3.トップダウンアプローチは、重要な対象に段階的に絞り込んで設計・構築するので、少ない工数で大きな効果を上げられる

  上記のように段階的に合計5回の絞り込みを行うことによって、業務システム構築の第1回目の開発サイクル(イテレーション)として、最重要な5.6%(注1)だけを対象にアジャイル的に設計・構築しました。しかし、重要度による絞り込みを行っても、事業戦略を実現できて、ETO品の売上が前年比で190%という目覚ましい効果を上げたのです(注2)。

  GUTSY-4のトップダウンアプローチでは、プロセス階層レベルに従って段階的に分析・設計していくので、一見、期間と工数がかかるように見えます。しかし、プロセス階層レベルにしたがって段階的に重要なものに絞り込んでいくので、最終的にはレベル5では少ない対象しか設計・開発しないで済み、なおかつ大きな効果を上げられるのです。逆に、ボトムアップアプローチで、レベル5にこの何倍もの開発期間と費用をかけて、ITシステム構築を行っても、この事例のような大きな効果は得られません。

(注1)×②×③××=約1/2 × 約1/2 × 約1/2 × 約1/2 × 約1/3 = 約5.6%

(注2)同社の続く第2次では、上記の絞り込みで除外した「顧客サービスの向上」戦略に関する業務システム構築を行いました。

 

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