私は、1997年に「SAP R/3 ハンドブック」、その後「ERP導入ハンドブック」(日本能率協会マネジメントセンター刊)を共著したり、ERPに深く関わってきました。ほとんどの日本企業がERP導入に成功しなかったことは、極めて悔いの残るところです。それが、私をビジネスアナリシス方法論GUTSY-4の開発に駆り立てました。

  あるグローバル企業では、日本の売上は全世界の1/3しかありませんが(利益はもっと低い)、ERP導入費用は日本が全世界の2/3を使い果たしました。これは、トラブル事例にはなっていませんが、ビジネスの観点からすると明確に失敗です。こういう事になった結果、企業の情報システム部門は、経営陣からは不信、ユーザ部門から相談相手に見なされないという後遺症が残ってしまいました。また、これが情報システム部門がビジネスアナリシスに取り組もうとした場合の大きな障害になっています。

1.経営陣から情報システム部門への見方 <経営の役に立たない>

  ERP導入においてアドオンの山を開発したため、予定した期間や予算を大幅に、ある場合は2-4倍と超過してしまいました。このため、経営陣からは情報システム部門の信用はガタ落ちとなりました。この責任は、後述するように情報システム部門の責任ではないのですが、ほとんどの企業において経営陣からの信用は失墜したのでした。

2.ユーザ部門から情報システム部門への見方 <現場の業務の話は聞かずに、自分の都合を押し付ける>

  情報システム部門はできるだけERPアドオン開発を減らすため、とにかくERPに合わせることをユーザ部門に強要せざるを得ませんでした。その結果、個別開発の時代とは変わって、ユーザ部門からは、情報システム部門は業務の相談をする相手では無く、自分の都合を一方的に押し付ける存在と見なされるようになってしまいました。

3.情報システム部門自身 <業務知識の空洞化>

  部門自身はERP技術の習得も不十分なまま、ERP導入パートナーを中心にERP導入プロジェクトに携わることになりました。したがって、ERP導入パートナーとユーザ部門をつなぐ伝言屋のような役割に成らざるを得ませんでした。その結果、ユーザ部門がなぜその業務機能を必要としているかを知ることや検討の機会が少なくなってしまいました。ERP運用に入る頃は、ERP技術の習得が追い付いてきましたが企業内にも拘わらず自分の企業の業務への知識は空洞化したままです。

  以上の責任が誰にあるかですが、私は少なくとも情報システム部門ではないと思います。

【欧米企業と日本企業が大きく異なる点】

・CIOが存在し、CEOの戦略や意図を受けて、ERP導入のビジネス効果を出すことが役割。

・シニアマネジャーは、CIOの指示を受けてERP導入のビジネス効果を具体化するために行動。私は、外資系企業の日本法人のERP導入を見聞したが、ERP導入のリーダはビジネス側の執行役員であり、情報システム部長ではなかった。

・雇用の流動化と訴訟(人種、性差別)防止のため、ビジネスプロセスが明文化かつ標準化されているので、そもそもERPに合わせやすい。

・オペレータは煩雑なERP画面をそのまま操作できることは自分の履歴書にスキルとして書けるが、アドオン画面では書けないため、そもそもアドオン画面をいやがる。 

  日本企業の情報システム部門にこうした後遺症が残っているので、これからの役割であるビジネスアナリシスを手掛けようとしても、経営陣やユーザ部門がそのまま受け入るのはむずかしい状況があります。ここでは、本ブログは「問題提起」だけに留めておきます。

 

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