最近、「攻めのIT経営」という言葉をよく耳にします。2015年、経済産業省は「攻めのIT経営銘柄 詳細資料」の中で、次のように記述しています。

1. 米国の調査によればIT投資と生産性の相関あり ←これは大いに疑問

  "Beyond the Productivity Paradox: Computers are the Catalyst for Bigger Changes" August,1998 Erik Brynjolfsson and Lorin M. Hitt 

  を引用して、IT投資が無条件に生産性と結び付くような表現をしていますが、大いに疑問があります。なぜならば、上記の論文は、1980年代の「生産性パラドックス」調査の結論として、「コンピュータの効用が最大限に発揮されるのは、IT投資が、新戦略、新企業プロセス、新組織など、他の補完的投資と組み合わされる場合である。」と大きな前提条件を付けているからです。

  IT投資と合わせてこの補完的投資を実現するのが、ビジネスアナリシスです。したがって、ビジネスアナリシスを経ている米国のIT投資は、日本の約2倍の効果があります。これは、この10年近く、言われてきたことです。つまみ喰いの不完全な引用はやめて欲しい。

 

2.攻めのIT投資」の定義

  日本企業では、IT投資の目的は社内の業務効率化・コスト削減を中心とした「守り」に主眼が置かれているとして、守りのIT投資の例として、①業務効率化・コスト削減、②未IT化業務のIT化のため、③定期的なシステム更新サイクル、④プライベートクラウド導入などを挙げています。また、「攻めのIT投資」の目的は新たなビジネスモデルの創出や収益力の強化だとして、その例として、①製品・サービス開発強化、②ビジネスモデル変革、③顧客行動の分析強化、④新たな製品・サービス利用などを挙げています。

  こうした分類よりも、ズボフの1985年の論文での「自動化と情報化」の分類が適切です。関連ブログ記事:IT導入の目的「自動化と情報化」とは、どちらの方が効果が大きいか 

 

3.大企業の場合

  経済産業省と東京証券取引所は、2015年の「IT経営銘柄」として、18銘柄を選定しました。いずれも、そうそうたる企業ですが、特に、IT投資が牽引しているような気はしません。

  また、米国には13.5万人が存在すると言われるビジネスアナリストが日本企業では不在なため、残念ながらこれに続く企業がどんどん現れるとも思えません。  

 

4.中小企業の場合

  中小企業の場合は企業規模が小さいため、「業務効率化」のためのIT投資は従来から余り行っていません。これは、ITによる自動化による効率化の効果は小さいからです。

  しかしながら、事例Aの今野製作所は、ITによる情報化として、「顧客要求の引き出しと社内共有」を実現して、ETO品の売上を同一人員で約6倍に伸ばしました。これは、『「攻めのIT投資」の①製品・サービス開発強化』に相当します。そして、そのITシステムは安価なクラウドサービス利用です。

 

 5.「攻めのIT投資」の方向性は「情報化」

  もう、「自動化」のためのIT投資は止めませんか。コストと効果が見合いません。ある大手製造業では、社長が情報システム部門に対して、「コスト削減はもういいから売上増に貢献して欲しい」と言ったそうです。このように、「情報化」の領域は、大企業や中小企業を問わず、大きく残っています。ビジネスモデル変革ほど大げさでもありませんので、ビジネスアナリシスを経てここにIT投資をすべきだと考えます。これが、「攻めのIT投資」になりますし、多大なIT投資額が必要な訳ではありません。

  BtoC企業ならば、ビッグデータ分析も有用でしょう。しかし、BtoB企業でも今までは、有用な情報が捨てられて、単なる結果だけの「データ処理システム」が大半です。情報化のためには、捨てられていた情報を蓄積・共有できる「真の情報システム」が必要となります。⇒関連ブログ記事:GUTSY-4による真の情報システムの構築へ 

  また、情報化の効果は組織学習となって現れるので、効果は毎年、継続して上昇していきます。自動化による効率化の効果は一過性で終わってしまいますが。

 

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