ショシャーナ・ズボフが1985年に発表したように、IT導入の目的には、次の2種類があります。

1.自動化

  人手で行っている作業プロセスをITによって自動化するというもので、その効果は「効率化」とか「省力化」と呼ばれます。自動化には、次の3つのレベルがあります。
①単独のビジネスプロセスの効率化     例)計算や帳票作成の自動化
②複数プロセスの連結    例)受注時に同時に在庫引当も行う、 売上時に同時に仕訳伝票も作成 
③ステークホルダ間のプロセスとの連結  例)販売代理店で受注入力する

2.情報化

  人が行っている意思決定プロセスに対して、ITによって有用な情報を提供しよう、意思決定を有用にしようというもので、その効果は「効果的な意思決定」です。情報化には、次の3つのレベルがあります。
①データの共有     例)商品別の受注や売上実績
②情報の共有      例)顧客の購買実績と顧客プロファイル情報
③ナレッジの共有    例)顧客要求について、インタビューすべき項目と過去の例 

  1960-70年代は、大量データ処理を自動化(上記レベル①)によって効率化しようと、 コンピュータシステムが導入されました。ERPパッケージは、主に上記レベル②の自動化を狙ったものです。久しく、ITは自動化ツールと思われて導入が進んできたことから、もはや自動化の余地はそんなには残っていません。そして、生産の海外移転に伴なって、大量データ処理自体が日本から消えつつあり、「自動化」というIT導入の目的は、次第にIT投資効果が見合わないものになってきました。

  一方、企業の経営情報システムによって、データ共有による情報化はこれまでに行われてきました。しかし、画一的なデータ提供に過ぎないため、あまり効果的な意思決定の支援にはなっていませんでした。その後、顧客の購買行動の分析などによる情報共有、そしてベテランノウハウの形式知化などによるナレッジ共有は、付加価値が高い特定の意思決定プロセスに対して、これを支援するものであり、アナリティクスのような技術進歩もありこれからの領域です。事例Aは、まさに「情報化」によるナレッジ共有の事例です。

  また、「自動化」の効果が1次関数型であるのに対して、「情報化」の特長として、意思決定の結果が蓄積されていくので、そのIT投資効果は2次関数のように増加していくこと挙げられます。事例Aでは同一人員で、直後にはETO品の売上が2倍、そして4倍、現在では8倍になっており、さらに拡大していく様相を見せています。これは、情報化による組織学習の効果です。

 

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