ここで、重要とは、企業の業績に大きなインパクトを与えるということです。そして、意思決定とは、問題を解決することです。したがって、「重要な意思決定」とは、たとえば、サプライチェーンの需要計画の立案、商品企画の立案、プロモーション計画の立案、研究開発テーマの選定などです。

1.意思決定の2つのタイプ

  H.A.サイモンは、意思決定を定型的意思決定と非定型的意思決定という、2つのタイプに分類しました。定型的意思決定というのは、日常反復的に発生する意思決定であり、ルール化が可能なものです。これは、ブログ記事:ビジネスプロセスとは何か、またその種類は?、において作業系プロセスとしたものです。

  非定型的意思決定とは、「問題が新しくその本質と構造が複雑で不明確であるために、 問題発生のたびごとに新たな代替案の探索を必要とする」というものです。全く「新たな」というと、新工場建設といった戦略的な意思決定となります。

  しかし、大半の意思決定は、過去に類似の経験があり、今回の特殊事項へ対応するというものです。これらの意思決定は、往々にしてブラックボックス化して、個人の属人的能力に委ねられています。だから、その意思決定は効果的だったのか、意思決定の方法について世間にはもっと優れたやり方はないのか、などの組織的な評価ができません。そして、意思決定者の退職とともに、そのノウハウは失われてしまいます。企業の業績を左右する「重要な意思決定」がこれでよい訳がありません。

2.意思決定プロセスの基本形

  H.A.サイモンは、意思決定を下記の4つのプロセスとして定義しました。

情報活動: 問題定義および問題解決に必要な情報を収集する
設計活動: 問題を解決するために、複数の代替案を設計する
選択活動: 複数の代替案を比較・評価し、基準を満たす特定の案を選択する
検討活動: 選択した代替案が問題解決できるかどうかをレビューする

  たとえば、業務参照モデルにおいて、意思決定としての需要計画プロセスは、情報活動としての「実需による需要予測」および「販促等計画に基づく需要予測」、設計活動としての 需要計画の計画基準の設定」、選択活動としての「需要計画の優先順位付け」、そして検討活動としての「全体の需要計画への集約」という構成になっています。

3.意思決定プロセスの見える化と標準化

  サイモンにしたがえば、意思決定もビジネスプロセスとして、プロセス機能や判断基準(ルール)を「見える化」し、一定の標準化を行うことが可能です。同類の意思決定でも複数の人はそれぞれ異なったやり方で進めています。そして、多くの場合、彼らは他の人に説明するのが得意ではありません。そうしたプロセスや判断基準を聞き出して「見える化」し、また標準化することはかなりむずかしい。

  また、非定型的なため、プロセスやルールは100%標準化することはできず、個人の属人的能力に依存する部分は必ず残ります。しかし、重要な意思決定プロセスを「見える化」して、柔軟なプロセスと業務ルールとして標準化すれば、これが企業としてのベストプラクティス、しいては競争力になります。

4.意思決定プロセスでのIT利用

  今野製作所の事例では、顧客からの要求引き出し項目とそれに対する質問を標準化して、IT利用によって情報共有することで、ETO品の売上を倍増させました。すなわち、担当営業員が案件ごとに顧客の要求を登録すれば、上長、同僚、技術職からアドバイスも得られ、提案・見積・受注までの営業案件の進捗管理もできます。そして、蓄積された過去の類似の営業案件も参照できるのです。地理的に離れた拠点との情報共有、そして意思決定プロセスやルールの定着は、IT利用なしには不可能です。しかし、こうした「重要な意思決定」プロセスにおいては、従来、IT利用はほとんど行われていません。  

 

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