IT投資の投資対効果を向上するなら

  ビジネスアナリシスに対するIT企業の動きが鈍いようなので、2015年5月に書いたブログを再掲します。ビジネスアナリシス抜きでは、IT投資効果は高まらず、企業のIT投資は減少して行きます。現在のIT需要が一巡する2020年にはどうなるのでしょうか? 

  IT企業が「それはユーザ企業の責任だ」と思うならば、IT企業自身のITシステムはどうでしょうか。十分なIT投資対効果を上げられていますか?

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  先週、20年来の知己のカリフォルニア大ポモナ校一色浩一郎教授と、2日間、行動を共にしました。移動の道中で、いろいろな話を聞きました。米国には、13.5万人のビジネスアナリスト(CBAPレベル)が存在している、これに予備軍のCCBAレベルも存在していると。その話から、下記のIT投資額配分の日米比較図を作成してみました。

IT投資額配分の日米比較.jpg

  この図を解説しましょう。

1.真ん中の「日米のIT投資に対する企業の生産性向上への相関係数」

  良く利用されるマクロ経済で分析した図です。日本のIT投資がもたらす企業の生産性向上(経営価値)は、製造業で米国の約54%、非製造業では約7%という低さという日米の比較図です。すなわち、米国のIT投資はハイリターンであるのにも拘わらず、日本は箱物重視の公共工事型投資でローリターンということを示しています。

 

2.米国企業のIT投資額の配分

  一色教授の話によると、米国企業はIT投資額の約半分をビジネスアナリシスに費やしているそうです。新しいビジネスモデルの実現となると、さらにその比率は高いと。これには、次の歴史的経緯があります。

1980年代の米国は、「ジャパンアズナンバ-ワン」 に対抗しようと膨大なIT投資に走った。

そのIT投資は、企業の経営価値向上に寄与しなかった。ソロー他の「生産性パラドックス研究」によれば、組織、プロセス、ルールなどを改革せずにIT投資に走ったことが原因。

■その反省から、1990年代は「要求を引き出す」要求工学、2000年代からはビジネスモデルも含むビジネスアナリシスを取り入れて、IT投資をするようになった。

■そして、現在では、ITシステム構築の前には、必ず、ビジネスモデル、組織、プロセス、ルールなどの改革を含むビジネスアナリシスを実施して、全体の約半分以上の費用をこれに費やすようになった。

■ITシステム構築自体は、クラウド、パッケージ利用、オフショア開発で、低コストになっている

■その結果、IT投資の経営価値は、日本の約2倍(製造業)、約14倍(非製造業)と飛躍的に増大した。

 

3.日本企業のIT投資額の配分

  日本でも、最近は、RFPを作成してITソリューションを選定するようになったとはいえ、IT要望を現場からヒアリングして、ホッチキスで止めただけのようなお粗末なRFPを良く見受けます。従って、RFP作成までにIT投資額のせいぜい5%程度以下しか費やしていないと思われます。

■ビジネスアナリストがいないため、現場からIT要望(要求とは見なせない)をヒアリング、これを集めて形式だけ整ったRFPを作成。

■経営面からのビジネス要求も反映せずに、現場からの要望を元にITソリューションを選定して、オペレータのためのITシステムを構築。

■ITシステム構築自体は、自前インフラ、個別開発と高コスト方式を採用。

■IT要求として曖昧かつ網羅性もないため、たとえば5億円以上の大型ITプロジェクトでは、成功率は10%程度と予算を大幅に超過。

■ITシステム機能は、半分が、全く、あるいはほとんど使われていない。この原因は、要望を「ヒアリング」したので、本来は要求とは見なせない保険的要求や金メッキ要求が半分ほどを占めているため。

■こうした結果、IT投資プロジェクトは箱物重視の公共工事型投資となって、ローリターン。IT投資の経営価値は、製造業で米国の約54%、非製造業では約7%しかない。

  すなわち、日本は最新のITを、30年前の方法で導入しているのです。これでは、IT投資効果が出る筈がありません。ですから、売上高に対するIT投資比も米国の1/4しかありません。すなわち、IT投資対効果が出ないから、IT投資しないという負のスパイラルです。そして、国際競争力もどんどん下位に落ちていく。

  このブログを書いていて、本当に気分が悪く、気が滅入ってきます。日本のこの惨状を救うのは、ビジネスアナリシスしかありません。一色教授は、日本には10万人のビジネスアナリストが必要だと言います。エンジニアリング化されたビジネスアナリシス方法論GUTSY-4を使えば、ビジネスアナリストを早期育成できますし、それを目標に開発してきました。

 

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