ビジネスアナリストには、3 three skills for business analyst.jpg右図のように、3種類のスキルが必要なことを説明しました。では、業務担当者がこの3つのスキルを身に付ければ、その組織にはビジネスアナリストは不要なのでしょうか?

  その答えは、「ノー」です。たとえば、プロゴルファーには、それぞれコーチが付いています。ゴルフの技量ならば、おそらくプロゴルファーの方がかなり上でしょう。では、なぜコーチが必要なのでしょうか?

 

 1.問題解決には「客観的存在のサポート」が必要

  プロゴルファーが自分の不調を自覚していても、その根本原因にはなかなか気付かないものだと言われます。また、名コーチは質問しかしないとも言われます。そうなのです、プロゴルファーはコーチから質問されることによって、冷静になって不調の根本原因に自ら気付く訳です。人は間違い、悩むものなのです。

  ビジネスの現場においても同様です。だから、欧米企業は社内コンサルタントとしてビジネスアナリストを置くのです。その理由について、ヒューレッド・パッカード社の経営陣は「業務の改善は現場の責任である。しかし、経営としてはそれを迅速に行ってもらうために、社内にビジネスアナリストを配置する。」と言います。だから、それぞれの欧米企業には社内コンサルタント職種が10数以上あるのです(1998年当時、カリフォルニア州立工科大学一色浩一郎教授談)。

  日本企業は、現場が優秀なために、今まで経営者はこうした必要性を感じないできました。しかし、今やグローバル競争になって、かつ昔よりもかなりのスピードが要求される時代です。日本企業にも客観的な存在としてのビジネスアナリストが必要なのです。ものづくり競争力の強化のため生産技術部門があるのですから。 

  実は、日本にも、客観性の重要性について、古くからの諺があるのです。

岡目八目 これは、「他人の碁をわきから見ていると,打っている当人より八目も先まで手が読める」、すなわち、第三者は当事者よりも客観的によく状況を判断できるということの喩えです。

灯台下(もと)暗し これは、「灯台の真下が暗いように、身近なことがかえって気づきにくいこと」の喩えです。

  そして、医療でも、本人の自助努力を援助するためのカウンセラーの役割の重要性がようやく認識されるようになりました。

 2. ビジネスアナリストがユーザに提供する「視点や考え方」

  フレームワークは、知的生産者にMECEな視点や考え方を提供するものです。肉体労働は、蒸気機関や電気の力で飛躍的に生産性を上げてきました。知的生産者がフレームワークをはじめとする有用な「視点や考え方(注1)を知らなければ、原始時代の頭脳のままむずかしい問題に取り組まなければなりません。これを提供しているのが、ビジネスアナリシス方法論GUTSY-4に内在している技法・ツール群、および業務参照モデル(ビジネスプロセス、ビジネスルール等)なのです。

  知的生産で言えば、私のビジネスアナリスは答えを直接的には提供せず、相手をファシリテーションします。先日、組織の新設を検討する企業に、組織のメタモデル、および組織設計の考え方、そして途中まで記入した組織設計シートを説明しました。あとは、ユーザ担当者にこの考え方で設計してもらって、それを私がレビューするのです。これについて、担当者は新しい考え方を知って「自らの成長につながりワクワクする」と言いました。ビジネスアナリストやGUTSY-4は、知的生産のための「視点や考え方」を提供するのです。ビジネスアナリストは、相手に代わった作業者になってはなりません。

  適用業務分野についても、同様です。たとえば、調達業務を取り上げると、業務担当者は部門の会議などに時間を取られながら、毎日、定常的な業務を繰り返します。したがって、以前と異なる知見が必要な新しい業務の割合が10%とします。すると、20年調達業務に従事しても、自らの成長につながる業務経験は、年間700時間×10%×20年=1,400時間しかありません。20%としても大差ありません。したがって、ビジネスアナリストや業務参照モデルは、適用業務分野に関する別の新たな知見を提供するのです。

   一人の人間が適用業務分野や知的生産の方法にいくら詳しいと言っても、それは有限です。一方、解決すべき問題はますます複雑になり、解決までに費やせる時間はますます短く要求されます。

(注1)IIBA日本支部主催のカンファレンス(2013年12月12日)にて、米国のビジネスルールの第一人者である Ronald G.Rossはこれを思考ツールと称して、「ビジネスアナリストが思考ツールを使えばビジネス側の人間がもっと関与して、ITやnon ITのソリューションをエンジニアリング的に一緒に創っていくことができる。そして、ビジネスアナリストがビジネスに精通していなくとも、相手に適切な質問ができる。」と講演。 

 

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