先月末、私が理事長を務めているVCPCで、2つの半日セミナーを開催しました。両方とも、業務参照モデル, プロセス参照モデルやCobiTというフレームワーク(FW)を利用して、フレームワーク思考する演習が入っています。

1日目:プロセス参照モデルを利用したプロセスフローとプロセス詳細のモデリング

2日目:ビジネスプロセス記述からCobiTを利用してIT要求を質問・引き出す

  そこに、私の旧知の50歳代のベテランコンサルX氏がいました。すごく好人物です。

1.人は自分の経験に縛られがち

  X氏は、1日目で、一般的なプロセス参照モデルにすごく抵抗を抱いていました。業務経験が豊富なだけに、業界や業種の違いにこだわっていました。演習の一つは、15個のプロセスフローを描くというものでしたが、自分の経験の深い部分は詳細過ぎる、経験が薄い部分は簡単過ぎるという結果でした。

  彼は、『演習前半でプロセス参照モデルを利用しない時は、プロセス粒度がバラバラになってしまった。「引合と見積」ここだけを長々と詳細に書き過ぎてしまった。』と述べました。後半は、プロセス参照モデルに慣れたようでした。

  このように、人の経験というのは、全般をカバーする訳ではなく、マダラ模様にならざるを得ません。しかし、ビジネスアナリストや超上流SEは、顧客の問題解決に貢献するのが仕事であり、彼らの経験はそのための手段に過ぎません。顧客は相手が貢献さえしてくれればいいのであって、業務経験だろうがプロセス参照モデルからだろうが、どちらでもいいのです。

  X氏は、2日目で、IT要求に関してCobiTを使って質問項目を用意することにも抵抗感がありありと見えていました。彼は、『演習の最初、それを使わずに、余計なことをいろいろ考えてしまったが、最後はフレームワークによってモレがない質問項目ができた。』と述べました。

2.なぜ、人はフレームワーク思考に抵抗を感ずるか

  東京海上日動システムズでのビジネスアナリシスのOJTでは、25歳の入社4年目のSE達は、業務知識もなく、ビジネスアナリシスも初めてです。後日、彼らにVCPCで講演してもらった時に、「製造業のプロセス参照モデルを保険サービス業に適用できる」と言い切っていました。私は、まだ、両方とも知らないクセにと笑いを押さえてしまいました。

  実際にそのとうりで、保険事故処理は製造業の返品処理と酷似しています。しかし、顧客にとっては彼らが実際に経験があろうが無かろうが関係ありません。問題解決さえしてくれれば。

  X氏のような経験豊富な人には、フレームワークFWに対して抵抗感を無意識に抱く傾向があります。別の時には、60歳代のベテランがプロセス参照モデルは使えないと言い切って帰った例もあります。発祥のHP社では、20年近く使っているのに。

  人はなぜ未知のFWに抵抗感を抱くのでしょうか? 私は、それは自分の経験に対する自信、自分の存在根拠が揺らぐことへの心理的抵抗が無意識に芽生えるからだと考えます。

3.フレームワーク思考で、「守破離」す

  最初は、フレームワークFWを利用する「」によって、一定の成果を迅速に上げます。しかし、FWといっても完全無欠なものはありません。ある問題については、役立ちません。その時に、自分が積み上げた経験を利用するのです。これが「」。そして、さらにむずかしい問題では、何のFWも使えません。したがって、自分の頭だけで考えます。これが「」です。

  私は、この「離」の時に、なぜ私はそう考えたのか、それはどのような観点からなのかと、自分の思考経路を分析します。そして、その観点に不足はないのか、MECEにするためには、などとレビュー・整理して、自分だけの新しいフレークワークFWを開発します。これは、次に同様の思考をする際に、品質と効率を保証するためです。

  GUTSY-4の技法の3割は、既存のFWを利用したものですが、残りは自分で開発したものです。IT要求でいえば、プロセスモデルのメタモデルとCobiTという2つのFWを組み合わせたものもあります。

   もし、X氏がフレームワーク思考を習得すれば、自分の経験が何倍にも増えます。自分の経験だけを使う場所は、「破」と「離」です。プロセスモデリングのような一般的な仕事は「守」でよいのです。後日、X氏と「これを習得すれば、70歳まで働けるよ」と笑い合いました。明日は、彼から依頼された検討事項で一日を使う予定です。これは頭の体操。

 

 

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