米国では、1990年代に要求工学、そして2000年代にはビジネスアナリシスが誕生したと言われます。日本は、最新ITを30年遅れの昔のやり方で導入しています。本ブログでは、米国の歴史的経緯を振り返ってみます。

 

1.1980年代末の「生産性パラドックス」・・・・IT投資が企業の生産性向上に寄与していない!

  1980年代は「ジャパンアズナンバーワン」と言われた時代です。米国では、この日本への対抗措置として、企業がやみくもにIT投資に走ったそうです(カリフォルニア州立工科大学の一色浩一郎教授の談)

  この結果をロバート・ソロー他何人もの学者が実際に企業を調査・分析して、IT投資が企業の生産性向上に寄与していないという「生産性パラドックス」が発表されました。IT業界に身を置いた私は、後でこれを知ったのでしたが、何ともショッキングな分析結果でした。

  そして、マサチューセッツ工科大学のブライニョルフソン=ヒットは、全米大企業367社(Fortune1000社の554社から抽出)を調査・分析して、「IT投資効果が最大限に発揮されるのは、戦略・プロセス・組織と組み合わされた場合」と、これへの解決の方向性をしめしました。

 

2.「生産性パラドックス」の具体的な解決策・・・・要求工学やビジネスアナリシスの誕生
  米国では、IT投資効果を向上させる具体的な解決策として、1990年代に要求工学 、そして、2000年に入るとビジネスアナリシスが誕生して発達しました。

  要求工学では、利用者からのITへの要求は、「ヒアリングではなく質問して引き出す」ことをKarl E. Wiegers著「ソフトウェア要求」日経BP社で知った。本書は、2002年頃、翻訳中の原稿を途中で見せてもらっていましたが、引き出す(elicitate)とは何とも新鮮な言葉でした。

  ビジネスアナリシス とは、「事業戦略を実現し、経営課題を解決すること」です(IIBAの定義とは少し異なりますが)。そのために、先ず、プロセス、ルール、組織、人、ナレッジを含んで企業における変革を行ってから、ITシステム導入を開始するのです。

 

3.現在の米国企業のIT投資・・・・・・半分以上の金額をビジネスアナリシスに投入してからIT開発

 

4.現在の日本企業のIT投資効果・・・・米国企業の半分以下

  マクロ経済の産業連関表による「IT投資による生産性向上」では、日本の製造業は米国の約1/2、サービス業は米国の1/10以下のIT投資効果しか上げられていません。その原因は、ビジネスアナリシスを経ない箱モノ投資だからです。

  日本で唯一と言える分析結果があります。九州大学の篠崎彰彦教授は、経済産業省3,141社のIT投資動向の調査データを分析して、「IT投資効果が最大限に発揮されるのは、組織(プロセス)改革と人的対応の両方にしっかり取り組んだ場合」との論文を2007年に発表しました 。

・IT投資効果の高い順の第2位は「IT投資額は低くても、組織・人の改革に取り組んでいる」グループ

・IT投資効果の高い順の第7位は「高いIT投資をしたが、組織・人の改革に取り組まない」グループ

 ここでも、企業改革、すなわちビジネスアナリシスを経た場合に、IT投資効果がより高いと結論付けています。米国での調査結果からすれば、当然のことではありますが。

 

カテゴリ