ここでは、ビジネスアナリシス方法論GUTSY-4の概要として、以下のことを説明します。
1.1.1⇒ビジネスアナリシス方法論GUTSY-4のコンテンツ一覧
1.1.2⇒戦略からITシステムまでに4つのモデルがあり、これらを整合させる必要があること
1.1.3⇒GUTSY-4では4つのモデルを階層的に整合させるために、5つのフェーズを設定したこと
1.1.4⇒GUTSY-4によれば、戦略からのビジネス要求は必ずITシステムに反映できること
1.1.5⇒GUTSY-4による効果として、IT投資対効果が米国の半分以下を飛躍的に高められること
GUTSY-4は、戦略をビジネスプロセスやITに反映するため、これを経験がないSEがビジネスアナリシスを実施できるように、下図の各種コンテンツを内蔵しています。
ビジネスモデル
ビジネス
プロセスモデル
ITモデル
IT要求モデル
整合
整合
整合
顧客に価値を与える製品・サービスを開発・提供する仕組み
ビジネスモデルを具体化し実現するためのビジネスプロセス(含むビジネスルール) ビジネスプロセスとは ビジネスルールとは
戦略やビジネスプロセスからITへの要求
ITシステム(IT基盤、アプリケーション、情報・データ)
4つのモデルが整合性を持って連携することで、事業戦略を最終的にビジネスプロセスとITに落し込むことができます。そうでなけれな、戦略をITに反映できません。
4つのモデルの整合性は、1990年代にボストン大学のジョン・ヘンダーソンが提唱した「戦略アラインメント・フレームワーク」と似ています。しかし、GUTSY-4が異なるのは各モデルの詳細さ「粒度」を厳密に規定することで、「整合性の確保」を具体化していることです。
⇒ ブログ記事:モデル間の整合性の条件(補足)
GUTSY-4では、各モデルの詳細さ(粒度)は下記表で言うプロセス階層レベルで定義します。
プロセス階層レベルは、業務機能やプロセスの詳細さ(粒度)であり、地図の縮尺のようなものと考えるとよいでしょう。縮尺が異なる地図は互いにつながらないように、分担して記述したビジネスプロセスモデルは、同一のプロセス階層レベルでなければ相互につながりません。
プロセス階層レベルとその意味
組織例
機能・ビジネスプロセス例
0
事業戦略
複数の経営機能別戦略から構成
事業部
1
経営機能(事業機能)
経営機能別戦略レベル
製造本部
営業本部
受注・出荷など
2
業務機能
経営機能別戦略を展開する戦術レベル
製造部
営業部
在庫(見込み生産)品の受注・出荷機能など
3
ビジネスプロセス上位
(プロセス)
プロセス改革をオペレーションとして検討・設計する単位
生産計画課
営業課
引き合いと見積もり、注文の受領と受注登録、在庫引き当てと納期設定など
4
ビジネスプロセス中位
(アクティビティ)
プロセス改善を検討・設計する単位
生産計画係
受注係
顧客の与信チェック、商品と価格チェック、納入条件の確認、受注登録など
5
ビジネスプロセス下位
(タスクやITトランザクション)
プロセスを実際に実行する単位
生産計画者
受注担当者
システムによる受注入力、在庫自動引き当て処理など
6
トランザクション機能部品(アクションやITコンポーネント)
タスクやITトランザクションを構成する単位
利用可能在庫の確認画面、回答納期確認画面、在庫引き当て更新指示など
⇒ ブログ記事:プロセス階層レベル(補足)
このレベル0からレベル6までのプロセス階層レベルの考え方は、グローバルなプロセス参照モデルから学んだものですが、米国でも全く同様でした。⇒ブログ記事:米国におけるプロセス階層レベルの考え方(BPTrends社)
ビジネスモデルを起点に、それぞれの4つのモデルが整合することが条件となります。そのために各々のモデルは、詳細さの異なるサブモデルから構成されます。下記の( )の中はプロセス階層レベルを表します。
このため、上位のプロセス階層レベルのサブモデルから下位のサブモデルへと順次、構造化して行きます。この構造化は、要素分解と詳細化という2ステップで行います。⇒ ブログ記事:構造化とは何か、戦略をビジネスプロセスに構造化する方法は?
ビジネスモデル
戦略レベル(1)
戦術レベル(2)
整合
ITモデル(5以下)
整合
プロセス改革レベル(3)
プロセス改善レベル(4)
プロセス実行レベル(5)
ビジネスプロセスモデル
整合
ハイレベル(3)
概要レベル(4)
詳細レベル(5)
IT要求モデル
これら各モデルを記述することがモデリングであり、この時にどのような要素で記述するかがメタモデルです。メタモデルが不十分だと、ビジネスモデル、ビジネスプロセスモデル、ビジネスルールモデル、組織モデル等のモデルの記述も不十分となってしまいます。BABOKでは「メタモデル」の用語がなぜ出てこないのか、不思議です。⇒ ブログ記事:モデリングとは何か、そしてなぜメタモデルが重要か
しばしば、コンサルタントの成果物は、IT導入に使えないと言われます。それは、その成果物が単に自然言語による文章だけで、メタモデルを意識して書かれてないため、次に具体化するためには、記述内容が不足するからです。このため、GUTSY-4開発においては、メタモデルの決定にかなり悩み、試行錯誤しました。⇒ ブログ記事:メタモデル
GUTSY-4 はプロジェクトライフサイクルに沿って、5つののフェーズ(構想、企画、計画、開発、運用・活用)にわたって、プロセス階層レベルに沿って階層的に、ビジネスモデル、ビジネスプロセスモデル、IT要求モデル、ITモデルをモデリングしていきます。
プロジェクトライフサイクル(PLC)とは、大規模プロジェクトを複数のフェーズに分割して、「投資と効果の見積精度を段階的に向上させ、リスクを減少させる」という考え方のことです。このPLCを採用することで、IT投資プロジェクトの投資対効果は大きく向上できます。
■階層的4モデリング方法論(GUTSY-4)の4つのフェーズ
GUTSY-4は、ビジネスプロセスやITに関するプロジェクトライフサイクルをプロセス階層レベルによって厳密に規定しています。⇒ ブログ記事:GUTSY-4の4つのフェーズ(補足)
一方、BABOKでは、こうしたプロセス階層レベルを意識していない知識体系のため、ビジネスアナリシスを実践できません。すなわち、ビジネスアナリシス方法論ではないのです。
GUTSY-4では、場合によっては、四つのフェーズをすべては実施する必要はありません。
例えば、プロセス改革の課題が明確な場合は、(Ⅱ)プロセス改革企画フェーズから実施。
ビジネスプロセスの「見える化」だけが目的なら、(Ⅲ)プロセス改革計画フェーズだけを実施。
JUASでいう源流には(Ⅰ)と(Ⅱ)、超上流には(Ⅲ)、上流には(Ⅳ)がそれぞれ対応します。 ⇒ブログ記事:GUTSY-4の4つのフェーズの対応
ビジネス要求とは⇒ ブログ記事:ビジネス要求、ユーザ要求、ソフトウェア要求(システム要件)の違い
これまでのフェーズで定義した要求は、下の図のようにマッピングできます。
例えば、プロセス階層レベル2におけるレベル2プロセス設計の「情報とITシステムによる解決策」は、レベル2の「ITへのビジネス要求(概要)」(BABOKでいうビジネス要求)であり、さらにレベル3プロセス設計の「情報とITシステム」に反映します。
このレベル3の「ITビジネス要求」(BABOKでいうステークホルダ要求)は、さらにレベル4プロセスの「ITシステム機能」へマッピングされ、ユーザにこの記述を基にした質問をする事で、ITユーザ要求(BABOKでいうソリューション要求)を引出し、定義します。
ビジネスプロセスによってユーザにITビジネス要求を意識させなければ、自分の利便性だけ考えたITユーザ要求だけが出てくるのはごく当然でしょう。
GUTSY-4では、こうした明確な構造化によって、ビジネスモデル(戦略)は必ずビジネス要求を通してユーザ要求(ソリューション要求)へと反映できます。BABOKには、こうしたプロセス階層レベルと構造化の考え方が欠如しているため、単なる知識体系だけであり、実際にビジネスアナリシスはできません。
レベル2
プロセス設計から
ITビジネス要求(概要)
レベル3
プロセス設計から
ITビジネス要求(詳細)
レベル4
プロセス設計から
<概要>IT要求
レベル5
プロセス設計から
<詳細>IT要求
レベル6
ユーザ要求から
ソフトウエア要求仕様
レベル2
プロセス名
レベル2プロセス分析
レベル2プロセス設計
業務要求/業務課題
現状と原因仮説
業務要求のCSF
業務課題の根本原因
解決策
(レビュー前/後)
情報とITシステム
レベル2
プロセス名
レベル2
プロセス分析・設計
レベル3
プロセス分析
レベル3
プロセス設計
業務要求/
業務課題
解決策
レベル3
プロセス名
プロセス
改革テーマ
組織
業務
ルール
プロセス
機能
人
情報と
ITシステム
プロセス構成要素
レベル4プロセス設計
ユーザ要求定義
レベル3プロセス名
レベル4プロセス名
① 目的・機能
(上段)人間系を不埋めた全て
(下段)ITシステム機能
② インプット1(イベント)
② インプット2(リソース、制約)
③ アウトプット1(イベント)
③ アウトプット2(リソース)
④ コントロール(ルール)
⑤ 担当責任(組織、人)
ITビジネス要求(詳細)
ITユーザ要求として具体化
2次元インタビューシート(クラウド化済み)によって、ITユーザ要求を引き出す
ITユーザ要求の引き出し方 ⇒ブログ記事:ビジネスプロセスからITへの要求を引き出す、IT要求開発をする
ビジネス要求を必ずITに反映できることは、GUTSY-4による効果の単なる一つに過ぎません。効果全体⇒GUTSY-4の特長と構造
GUTSY-4によるビジネスアナリシスは、日本のIT投資プロジェクトの効果は米国の半分以下 という状況からIT投資効果を飛躍的に高めます。
そして、IT業界や情報システム部門を変革、改革します。また、新たなITシステムの導入の効果として、意思決定業務を対象とすることで、今までの効率化ではなく売上増加を狙うことができます。⇒攻めのIT活用
代表的な脅威は、①自動生成ツールの普及で、ITシステム開発工数は半減以下、②クラウドサービスの普及で、サーバ販売の消滅⇒ブログ記事:SI業界の脅威
これは当然でしょうね。何せ、今までのIT投資の効果が上がっていないのですから。
機会は、①ビジネスアナリシス、②意思決定プロセスのBPM、ルールエンジンやBPMS適用、③インダストリー4.0により中小企業がIT導入市場になる ⇒ブログ記事:SI業界の機会
この3つの機会は、今までに存在しない、全く新たなブルーオーシャン領域です。
グローバルな環境変化が起きているのに、ガラパゴス日本で今までのITビジネスがそのまま続く訳はありません。もし、それが続くようでしたら、IT企業は日本経済の足を引っ張り続けて、日本沈没の戦犯になるだけです。セコム社は、企業施設の人的警備から、社会のセキュリティ産業に自らを変化させ続けてきました。
上記(1)①ビジネスアナリシスによる「業務定義」、上記(1)②を利用してビジネスプロセスを制御する「業務ガイド」、そしてBPMSによる非定型・意思決定プロセス、ERPを始めとする複数のITシステム、これらをWeb連携させる「業務実行」、この3つが実現できるのです。⇒ブログ記事:GUTSY-4によるビジネスアナリシスからITシステム構築まで
実は、これは既に2011年に事例Aの中小企業において実現しているのです。大企業ならば、Web連携できるBPMSを利用して、ERP導入も相当のコストダウンできる(独ではSAPで実現済み)など、コスト面でも極めて大きな効果があります。⇒ブログ記事:GUTSY-4によるビジネスアナリシスからITシステム構築の効果