先のブログで、日本人の1時間当たり付加価値がOECD35カ国中22位なのは、企業内で用語が通じない、無駄な保険仕事、非明示な管理方式など、日本企業の組織上の問題を取り上げました。

  そして、これらの根本的解決として、「働き方改革の第一歩は仕事の見える化」を提案しました。

  実は、低い生産性の原因は個人にもあると考えます。それは、ビジネスマン全般の抽象化能力(水平方向垂直方向)、および幹部に必要なシステム思考力の二つです。

 『失敗の本質』(ダイヤモンド社)では、第2次世界大戦時の日米両軍について、戦略・作戦、組織の観点から比較して、日本軍の敗戦を分析しています。個人面の一つは、シングルループ学習の日本軍、ダブルループ学習の米軍、これは抽象化して学習する方法の差。戦略策定面の一つは、帰納的なオペレーショナル志向の日本軍、 演繹的でグランドデザイン志向の米軍、これは幹部のシステム思考力の差でしょう。

  私は、第二次世界大戦の敗戦、グローバルな経済戦争での低い付加価値、この二つに共通点を見い出してしまいます。本ブログでは、抽象化能力だけに言及しますが、抽象化できなければシステム思考もできません。抽象化やシステム思考の手法や事例については、GUTSY-4コンテンツに内蔵していますが、本稿では省略します。⇒経営幹部には抽象化能力とシステム思考力が必要!  

1.個人自身の抽象化能力も低い(仮説)

  私は、日本人は働いた年数に比べてスキルが向上してないという仮説を持っています。顧問先の企業で東日本大震災の対策として、働く職場を失った社会人8年生と新卒、この2名を採用したと。最初の期間は、新卒の方が仕事の呑み込みが速かったと言います。経験者は、以前に在籍した企業の特有の例外事項とかには習熟していましたが、仕事の基本プロセスが分かっていなかったため、新しい職場にすぐには適応できなかったからです。

  平均勤続5年の転職社会である米国では、組織として明示的な管理方式だけでなく、個人でも「自分の実経験を無意識に抽象化して、次の転職先で活かす」ことが人間の本能として行われているのでしょう。そうでないとビジネス社会で生き抜いて行けませんから。

  ところが、終身雇用の日本では、転職に必要な自分の「抽象化能力を高める」という動機がないため、個人のスキルも向上しません、そして個人も、次第にツブシが利かない人間になっていきます。笑い話ですが、転職面接で「部長職なら出来ます」と、これ自己PR?

  その影響として、日本ではSCORなどの抽象化されたプロセス参照モデルが広まりませんでした。我が社の特別事項が入っていないとか心理的に拒絶する人もいましたが、そもそも抽象化されたものが理解できないのでした。。

  事例Aは、ITシステムによって会社が抽象化の組織学習を支援した成果です。しかし、ビジネスマンは生き抜いていくため、家族を守るため、先ず個人自身で自分の能力を高めることが不可欠です。

  その最大の能力が自分の経験やスキルをさらに拡張できる抽象化です。抽象化には次の2段階があります。 

2.自分の能力を高めるための抽象化(類推とシステム思考)

(1) 水平方向への抽象化による拡張(類推とも呼ばれる)

  モノづくりならば〇〇だけど、サービス提供の場合はどうだろうか? 経験した製造業務の幅をモノからサービスに拡張して考える。モノづくりならば〇〇だけど、調達の場合はどうだろうか? 経験した製造業務を幅を調達業務に拡張して考える。

  こういう抽象化の習慣によって、自分が実経験したことから未経験のことを類推していけば、経験を拡張して行けます。実経験だけに自己満足していては、自分を狭めてしまいます。業務参照モデルを利用すれば、類推によって自分の経験を広い範囲に拡張できます。

(2)垂直方向への抽象化による拡張(これをメタ思考と呼ぶ人もいる)

  ・経験した業務の上位機能の全体を仮説する。

  たとえば、課長職の場合には日常的に部長の行動を観察していなければ、部長職が務まりません。部長の批判ばかりしていると、事業部長から「分かった。明日からお前が部長をやれ。」と言われたら、あなたはあなたが考える部長職が務まりますか?

  仕事を体系化したGUTSY-4業務参照モデルを利用して仮説を立てることで、日常的に抽象化能力を高めることができます。誰でも経験した事を出来るのは当たり前です。しかし、未経験のことをどうこなせるかが抽象化能力です。

  以上の詳細業務参照モデルによって自分の業務経験を横と縦に拡張する!

  

  以上は、私は、転職を3回しましたが、その度に自分の経験がまずはゼロリセットになりました。新しい職場の仕事を知らないことについて、年下の上司からかなり厳しく言われました。しかし、ゼロから始めていれば、本当の役立たずです。無意識に前職の経験を応用する抽象化スキルが身に付いた次第です。結果として、その企業の経営企画部長になりました。