【本ブログの要旨】

  日本的経営の特質の一つ「非明示的管理方式」は高度成長時代はその効率性から日本企業の武器になっていました。ところが、低成長時代も業務ドキュメントが存在しないこと、即ち「見える化」できていないことを続けて、今は大きく破綻。高度成長時代の「日本から世界に輸出する方式」から、グローバル化に対応すべき時代になったのですから。

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非「見える化」による5大弊害

  担当者交代の度に業務力が劣化、低生産性は働き方改革へすり替え、コンビナート死傷事故・品質偽装は業務監査が機能せず、グローバル企業になれず、IT投資効果の低さや最新ICTソリューションの導入失敗

1.非「見える化」によるトラブル例

  「業務用語集や業務ドキュメントがなく暗黙的に業務を実施する方式」は、日本的経営の特質といわれています。高度成長期は効率化に寄与しましたが、1990年以降は実質的に破綻しています。太平洋戦争と実に酷似。

(1)20年前のある出来事:存在する筈のIT機能が引き継がれない

  ある企業の業務現場で新たなITシステムへの要求が上がってきました。たまたま親側のITシステム会社に現在のITシステム構築に携わった者が居て、「おかしいな、その機能はある筈」。結果は、業務ドキュメントが作成されていないため、業務の後任者がその機能が無いと思った次第。

(2)10年前のある出来事:経営幹部会で用語が共通認識されない

  ある巨大企業の経営幹部会では議論が成立しませんでした。マーケティングに新製品の構想・企画を含める人も居るし、別々に考える人も居ましたので。

  別の巨大企業の社長の新聞談話を各事業部長が理解できない。結局は、社長の言葉を忖度、拡大解釈して膨大なムダな施策を考えることに。

(3)5年前のある出来事:業務担当者が業務の目的が分からない

  ある企業の情報システム部門が業務現場の担当者に「何の目的でその業務をやっているのか」と質問すると、業務担当者は「課長からやれと言われたから、やっています」と回答。その課長に同じ質問をしたといして「前任者から引き継いだだけです」と回答がきたら?

(4)現在:ユーザ側でIT要求を定義できない

  IT企業は、要件定義と称したWBSを実施する際に、ユーザ企業側の業務要件(=IT要求)定義力が弱く困っています。これは、業務ドキュメントがないために業務担当者が代わる度に「現場力が低下」してしまうからであり、ITだけの病状ではありません。

2.非「見える化」による5大弊害

  用語集や業務ドキュメントがない「非明示的管理方式」からは、以下のような大きな弊害があります。景気が良くなったと浮かれている場合ではありません。

(1) 業務担当者が交代する度に業務力が劣化    

  高度成長時代のように切れ目なく新人が入っては来ず、先輩の背中を見て仕事ができません。先輩は10歳以上の年上であり、後輩からはちっともその背中が見えません。(その人は定年退職で居なくなります。見るべき背中もなくなります)

  また、調べようと思っても、業務ドキュメントや標準プロセス、まして用語集さえありません。したがって後輩が質問すると、今度は先輩ごとに回答が異なります(電通の高橋まつりさん)。

(2) 時間当たり生産性がOECD中22位という低生産性を「働き方改革」へすり替え  

  非「見えるか化」なので重複した仕事や欠落した重要な仕事が存在します。効果の小さい2重チェックや例外処理の無駄など、業務ドキュメントがないためチェックできず、そのまま放置されます。当然「見える化」されていないから。

  私は、経営会議や幹部会に同席して、出席者全員が「正確に理解できている」かを質問したくなります。

  低生産性の根本原因を放置したまま、「働き方改革」にすり替わって、未だに第2次世界大戦時の精神論のままかと嘆きたくなります。

(3)死傷事故や品質偽装問題の発生は業務監査が機能せず

  コンビナートでの爆発事件の後、社長が「業務手順を間違えた」と謝罪。この企業で再び事故が発生したのは当然。原因はプロセスや機能の欠落であり業務手順ではありません。この言葉を使用する前に広辞苑を引いた? この企業では日本語自体が通じません。           

  仕掛品は品質証明書があって初めて製品になります。このプロセスを定義した業務ドキュメントがないため、現場は偽装という意識がなく業務を習慣的に実施しただけ。ISOはどうやって認証された? 監査役や業務監査部門は機能した? 

  大会社は法律で「業務監査」が義務付けられています。品質偽装のことを意図的に見逃がした訳でないとすると、業務監査が機能してなかったことです。業務ドキュメントがないのだから、業務監査できる訳がありません。 

(4)多国籍企業どまりでグローバル企業になれず

      海外拠点を設置しても、ビジネスプロセスを伝えられないため、結局は海外現地任せ。あるいは大量の日本人スタッフが常駐せざるを得ない。すると現地採用の人は出世が望めないため、優秀な人材は日系企業に入社せず。悪循環の繰返し。また、海外企業を買収した場合は、多額の隠れ負債を残して経営者に逃げられてしまう。(日本の社長の給与では海外の優秀な経営者は働いてくれない)

  また、日本人のお仲間とだけの交流。欧州拠点の責任者を5年務めていたという人が「ビジネスアナリシスはダメだ。分析だけだから。」と発言したのにはひっくり返りそうになりました。「アナリシス=分析」、海外駐在の5年間、頭の中は日本語で考えていたのか! これではバーノンの定義ではグローバル企業以前の多国籍企業です。

(5) IT投資効果の低さや最新ICTソリューションの導入失敗

  技術が大好きな日本人は、現在、IoTだ、AIだ、RPAだと大騒ぎ。しかし、導入効果が出ていない事例が多発、これは当然です。IT技術だけへの投資は効果が小さいという「生産性パラドックス」への反省から、米国でビジネスアナリシスが誕生したのですから。

  日本企業が「非見える化」の暗黒状態で、ボトルネックの特定が出来ていないので、どこに最新ICTソリューションを導入していいか分からない。そこで、逆に導入しやすい箇所を思い付きで選定した挙句、効果が出ていない!、ダメ!だと大不評です。どんな技術もそれを導入する対象を誤れば効果は出ない!そして、導入のための前提条件を満たす必要もあります。

  一方、「見える化」が進んでいる欧米企業は、当然、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)BA(ビジネスアーキテクチャ)も出来ているので、ボトルネックの特定もし易く、日本と同一ICTソリューションでも効果的に導入できます。日本ではダメ、EAのBAも出来ていませんから。