ビジネスアナリシスの一番最初のWBSは、対象向けの用語集の作成から始まります。私が方法論GUTSY-4でそうした理由を紹介しましょう。

1.一般用語でも人によって意味が異なる

  大分前にある会合で、大手電機メーカーの社内ビジネスアナリストが言うには、「経営幹部会議でも、事業部長や各部長、みんなそれぞれ『マーケティング』や『販売』の意味が異なっているため、会議にならない。」(他は後述の第2章で説明)。また、これは企中小企業でも全く同じ(後述の3章で説明)。こうした状態では、働き方改革は到底無理で、用語集がなければ、コロナ渦でも在宅勤務やテレワークができる訳は有りません。コミニュケーション不全で生産性が低下するだけ。

2.企業内の用語でも事業部が異なると意味が異なる

  15年前、ある楽器会社でサプライチェーンの打ち合わせをしていました。いろいろな事業部からの参加者がいて、「納期」について2時間ほど議論しました。会議の終了間際に、お互いに「納期」の意味が異なっていることに、全員が気付きました。この2時間の会議は何だったんだと。ある営業は顧客とネゴしたのが納期、ある工場は営業にこの期日なら納入できると回答したのが納期、全くバラバラ。

  大手精密機器会社で仕事をしている時に見聞した。会長が経団連で発言しそれが新聞にも出た。各事業部長は会社で顔を合わせた際に、「おい、アレやっているか」と会長から言われたら、「ハイ、やっています。」と回答できるように、アレを超拡大解釈してさらに部下へも落とすので、社内はテンヤワンヤ。  

3.中小企業でも業務担当や世代が異なると意味も異なる

  上記2の例は大企業だからで、中小企業だったら大丈夫だろう、というのも誤り。GUTSY-4を適用した今野製作所では、最初は、「標準品」の意味が部門によって異なっていた。営業部門は製品カタログに載っているもの、製造部門は通常の製造工程で作れるもの、開発部門は設計が不要なもの。この状態のまま標準プロセスや業務ルールを制定しても無意味。当然、方法論に沿って真っ先に用語集を作成しました。

  ある300人程度の企業でも同じ。「中興の祖」と言われる営業出身の経営役員が居たが、彼の話を各営業部長は聞こうとしないので、コジレて感情的対立にまで発展。用語集がないので相互理解ができず無駄な時間となるので、各営業部長が会話したくないのは当然。私からみれば、この悲劇はその経営役員自身の責任でしょう。

4.用語定義は全ての基礎、DXよりも重要

  よく海外進出と言われますが、用語を定義せずして日本と海外工場とが意思疎通がうまく行くとは、到底、思えません。あるメーカーの欧州部門の責任者だった人が、「ビジネスアナリシスには不満だ。アナリシスだから分析しかしない」と発言。これを聞いて、私は吹き出した。欧州在任中に頭の中は全て日本語だったの?

  たとえば、納期でいえば色々な種類があります。米国発のプロセス参照モデルで「顧客要求納期遵守率」と明確に定義しています。この理由は、上司がこれによって部下を悪い評価しようなら、裁判になって人種差別とも絡んで懲罰的賠償金が課されます。そして、米国では平均勤続年数が5年です。

  そして、「用語集」による用語定義の重要性は、ITシステム開発でも同様です。大手IT企業が作成した仕様書でも、作成者によって用語の使い方や意味がバラバラ。開発工程の生産性も悪いし、その仕様書が保守工程に使えない。私がユーザ企業側のPMOに所属し定例会でそれを指摘した時に、大手IT企業側は「どこが違うのか全て具体的箇所を全て指摘せよ」と開き直りました。人数だけ大手ですが仕事の質は中小以下。 

 

  ビジネスアナリシス知識体系BABOKでは、用語集はテクニックに入っています。一方、ビジネス方法論GUTSY-4では、一番最初に作成して、様々なWBSで継続的に更新していく要素成果物の一つとして取り扱っています。これが単なる知識体系と方法論の違いでしょう。そして、業務では言葉だけで全てを説明するのは難しく、業務参照モデルがそれを具体的に補助説明しています。

 

カテゴリ