【序】プラクティス(うまいやり方)は、B/Sには現れず、後にP/Lに大きく影響する

   別のブログで紹介した今野製作所では、プロセス標準化、およびプラクティスとして「ベテラン営業の暗黙知」を形式知化、そして顧客要求の共有画面としてIT化。その結果、同一人員数のままでETO品売上が15倍に、それも年々伸長。プラクティスは、B/Sには計上されない「知識の時代」の最高の資産。それも、有形資産と違って減耗もせず、使えば使うほど事例が溜まって価値が上昇していく無形資産。

本】プラクティスの共通利用は「標準プロセス」が大前提

   標準化されたプロセスであれば、ある部門で開発されたプラクティスを全社で共有できます。そして企業グループ全体でも共有できるという、範囲の経済の象徴です。終身雇用の日本では、プロセスが標準化されず暗黙的だった事が前世紀「工業の時代」の最大勝因でした。これが21世紀になると「失われた30年」の最大敗因。

   米国では、平均勤続年数が5年と言われています。人材は流動的であり、アウンの呼吸も伝わりません。P&G社は2000年、グローバル統一されたコード体系、そして標準化されたプロセスから、データ分析のためのデータウェアハウス、この3層アーキテクチャを発表しています。3M社では2004年以前に、研究開発プロセスを標準化し、6σ技法からプロセス品質を向上させる自社用プラクティスを開発し、全世界の拠点で24時間、活用しています。

   では、知識としてのプラクティスを全社に広めるのは、それぞれの現場の部門ということは有り得ません。その現場は既にそれを分かっている訳なので、その必要性がありません。それを全社の資産にする役割を果たすのがEnableプロセスです。標準プロセスには実行系だけでなく、これを共用・支援・促進するためのEnable系が必要であり、知識の時代のロジスティクスです。(第2次世界大戦の日本軍が軽視)

   そして適用事例のように使えば使うほど事例が増えて、減価どころか増価していきます。大企業の場合には多様な部門が存在し、ある部門が獲得したプラクティスを全社で使えるようにブラッシュアップせねばなりません。そして、このEnableを担当する部門が必要となりますが、この幾何級数的な効果が「知識の時代」の最大特徴です。これを企業グループ全体で行えば!

   やはり別ブログの結で紹介した一部上場製造企業のデータサイエンス室が、先ずプロセス標準化を最大使命にしたのはそのためです。様々なITソリューションが日本に入ってきていますが、日本のIT企業は先ず自社で使ってその前提条件に気付いて欲しい。AI技術を開発し終えてもどう使っていいか分からない大手IT企業もあります。一方、IBM社の営業の標準プロセスには、自社に存在しないITソリューションを報告する義務が記述されていると。   

結】プラクティスは企業内や一般的なのが多々。データサイエンスやAIなどではなく、ベテランが持っている暗黙知も該当

  ビジネスアナリシス方法論GUTSY-4では、ビジネスアナリシス自体は大分、前に完成しました。現在は、遅れた日本のビジネスアナリシスとして、標準プロセス+プラクティス集 と考えました。企業の全業務のプラクティスとして、約1,300個の洗い出しが終わって、現在、その表現のブラッシュアップ中です(忘備録的表現がいくつかあるため)。 

  企業としては、プロセス標準化の後、ベテランや退職者から自社独自のプラクティスを抽出する、これが「知識の時代」における、AIやデータサイエンスほどお金がかからない生き残り策です。危機感を持つ一部上場企業2社で実施中。

  国としては、プラクティス収集は「知識の時代」における効果絶大の事業として、ぜひ取り組んで欲しいテーマです。1個のプラクティスで10万円の懸賞金でも、もし10億円あれば退職ベテランから10,000個を集められます。さらにこれを抽象化して日本中の全ての企業に無料配布もできます。これが一人当たりの付加価値生産性は米国の1/2しかない現状に対する、「知識の時代」の公共投資です。